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アンタッチャブルのシカゴマンゴ 本当の最終回

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アンタッチャブルのシカゴマンゴの本当の最終回。10年間ずっと待っていたんですよ、この時を。なのに蓋を開けたら一番印象に残ってるのが「TCTT」ってどういうこと?
当時中学生で、シカマンでラジオの面白さに目覚めた自分にとって、シカマンはハッキリと青春だった。録音した音源を何回も聞きながら(オリンパスのラジオサーバー!)、毎週放送内容をノートに書くなんて最初で最後の体験だ。そんな番組がパーソナリティの一人が不在の中終わり、それ以来10年間ずっと本当の最終回を願っていたはずなのだ。なのに頭にこべりついて離れないのが「テンガチンポタマキンテンガ」って何? 最高だ。

シカマンは他の番組と比べてリスナーとパーソナリティの結びつきが強い番組だったと思う。しかしそれでも復活にあたって誰もが抱く、「番組のことやリスナーのことなんて忘れてるんじゃないか?」という不安。しかしそんな不安は開始早々「もう鮭だね。鮭缶っていたけど。」という言葉で消えていく。二人は想像以上に番組のことを覚えていた。過去の常連の名前を聞くたびに発される「元気にしてるんだねぇ~ ありがたいありがたい」「お!懐かしいな、みんな」なんて言葉にたまらない気持ちになってしまう。「僕の彼女は芸能人」を覚えている人がこの世に何人いるのだろう。

もうとにかく、すべてが10年前と地続きのように当たり前に何も変わらずそこにあるのだ。ザキヤマのネタ読み、しばんちゃんの引き笑い、作家の高橋さんの高笑いは勿論、例えばしばんちゃんの「○○でございますね」という細かい言い回しにすら10年前を感じてしまう。そして当たり前のように集まってくる常連リスナーたち。この10年どこで何をしてたかも一切知らないけれど、どこかで同じように復活に待ち望んでいて、その喜びをメールにぶつけたのだと思うとグッときてしまう。

勿論この10年で変わったこともある。例えばツッコミ先行宣言。かつてはオードリーやナイツやブラマヨがお決まりだったけど、10年経って顔ぶれも丸っきり変わった。それでも相変わらずBOOMERさんが若手のネタをパクろうとしているのは可笑しくてたまらない。それにしてもザキヤマのネタ読みの腕の鈍らなさ! 他の芸人のネタを丸々読み上げてしまうコピー芸も勿論なのだけど、短いネタを読むときの強弱の付け方や演じ分けがもうべらぼうに上手いのだ。もう「これしかない!」っていうような面白い読み方をしてくれる。ぼくはザキヤマこそ爆笑問題太田、ナイナイ岡村に引けを取らないネタ読みの名手だと思っています。

モテないシリーズはどうしようもなく情けないのに明るいのがとにかく最高なのだ。ルサンチマンみたいなものを一切感じさせない、カラッとした笑い。情けなさや卑屈さをばら撒きながら、それでも懸命に生きている愛すべきモテない男たちが目に浮かぶじゃないですか。そして「桑田のバスタオル」なんていうニュアンスの“モテなさ”を面白がるのは、「緑の中を走り抜けていく茶色のコロナ」に瞬殺されていたあの頃から何一つ変わっていない! 替え歌の歌詞のテイストや上手いのにネタの邪魔にならないしばんちゃんの歌唱力はあのころのままなのに、あいみょんに髭男と選曲はしっかりアップデートされているのもとても嬉しい。これは10年前の再放送なんかではなく、まぎれもなく2020年のシカマンなのだ。TCTTとかいうモテない替え歌の鬼っ子みたいなネタが生まれたのも、10年の沈黙が生み出した突然変異のように思えてならない。ザキヤマが相変わらず「残しの美学」を語っているのも最高だ。面白いネタが読まれたときの二人のトークの広げ方、すべての番組で一番好きかもしれない。

番組終盤、ザキヤマが「10年前の最終回の方がグッと来た」なんて言ってたけど、それも頷けるような、それくらい通常回のような放送だった。来週あたり毒舌ヒーローとかもやるんじゃないかと思っちゃうような。それでもいざ終わるとやっぱりさみしいものなのだ。祭りの最中はひたすら楽しいけど、終わってしまうとやっぱりさみしい。いつかまたしれっと帰ってきて「こんなのが聞きたかったのかな」なんて言いながらくだらないネタにゲラゲラ笑っていてほしい。そのときモテない替え歌には何の歌が使われてるのか、BOOMERさんは誰のネタをパクろうとしてるのか、しばらくはそんなことを楽しみにしていようと思う。