思うことはいつも

生活していて感じたことや触れたもの

2021年11月の記録

なんだかやたら忙しく、M-1の動画を追うので精一杯の日々を送っている。M-1の予選に行くたびに、「自分のやりたいことをやりたいだけできる無法地帯のような空間もいいけど、同じルール同じ制限時間で戦ってるからこそ各コンビの固有性が溢れ出るこの感じがやっぱり一番好きだな」と思う。3回戦はちょっと書ききれないので省略するけど、準々決勝だと三遊間、ニゲルベ、もも、フースーヤ滝音さや香、侍スライス、からし蓮根、丸亀じゃんご、令和喜多みな実、キンボシ、マリオネットブラザーズ、ニューヨーク、かもめんたるロングコートダディ、ラパルフェシシガシラ、男性ブランコ、軟水、コマンダンテ、キュウ、ランジャタイ、ダイヤモンド、真空ジェシカ、錦鯉、マユリカが特に好きだった。しかし個人的な好みで言うとかもめんたるがダントツ優勝。「円盤」と呼ぶ人への単なる偏見やヘイトではないのが本当にうれしい。「そういう人が握ったおにぎり全然食べます」みたいな、ものすごくニュアンスなのに説得力のあるセリフを作らせたら岩崎う大の右に出る者はいないなと思う。ニゲルベの台本の美しさにも惚れ惚れしたし、ダイヤモンドの意味を超えた先にある響きの面白さにも圧倒される。ランジャタイのあるワンシーンには死ぬほどときめいたし、さや香の話芸としての美しさには心底感動した。みんなすごい。

囲碁将棋の単独ライブ「WITH AMZING VIEWS 2021」をルミネで見た。情熱スリーポイントでのリスナーとの距離感で、つい近しい存在のような親近感を覚えてしまうけど、とんでもない。そこにいたのは、満員のルミネtheよしもとをマイク1本で沸かせる、間違いなく日本一の漫才師でした。おおげさでもなんでもなく、全着眼点、全固有名詞、全言い回しに自分の性癖レベルの好きが詰まっていて、90分間笑いながらクラクラしていた。例えば多額の借金を抱える理由が「学校のプールの栓の閉め忘れ」だという、それだけでめちゃくちゃ囲碁将棋だ!とうれしくなってしまう。もともと囲碁将棋は賞レースにそこまでアジャストするようなタイプでもないので、M-1卒業後の〜とかそんなのはあまり関係ないと思ってるけど、17年目にして漫才師としてのキャリアハイを迎えている気がする。基本的に自由度は高く、かといって賞レースで勝負できそうな強度のネタもあって、車事故のネタなんかは、バラシの山場から中盤のパンチライン後半の逆転劇までとても綺麗で、これをガチガチに4分にまとめれM-1の決勝に行ってたのではと思うほど。これからも、ずっとただただ漫才をやっていてほしい。

第十回 街裏ぴんく独演会「hardliquor」@渋谷伝承ホールへ。やっぱりホール会場が抜群に似合う。餃子の王将の店員が餃子片手に街中を歩き回るという比較的ポップなナンバーから始まり、焼津にある望郷独居濾過局というビル内で行われたコミュニティFMの収録、ボンベで自動的に寿司が提供される高級寿司屋、ホテルのロビーに固執するおじさんの演説、突然にこにこぷんぽろりが出てくるVHS、回送電車に乗ってたどり着いたとある場所についてなど、相変わらずマイク1本でめくるめく異世界へと誘ってくれる。そのたび大笑いをしながら脳が揺れるので、座って話を聞いてるだけなのにどっと疲れてしまった。帰り道に改めてぽろりの顔を調べてみたら思っていた以上に怖かった。確かに一番肉食顔だし、強い思想をグッと堪えたような顔をしている。

アーカイブの期限が切れるギリギリまで迷いに迷って、結局「大喜利マスターズトーナメント」を見た。ダイナマイト関西は、無限大でやってたプレ予選やD関無双を含め、2010年代の関連イベントほぼすべてに通ったくらい思い入れのあるイベントなので、この似て非なる催しを見ることで完全に自分の中のD関が終わってしまうのではないかという逡巡があったのだ。大喜利番組がスタートした頃のQJのインタビューや、大会のMC、Twitterなどでのあの苦々しい感じ、プレ予選での解説席の異様なピリつき、バッファロー吾郎のインタレスティングプロデューサー退任からの大会自体のフェードアウトと、決して大団円とは言えない終焉を迎え、ビターな余韻を残し続けたダイナマイト関西が、形を変えて復活する。でもそれは本当のダイナマイト関西はもう復活しないという宣言でもあるわけで。改めてD関完全終了の事実を突きつけられたような寂しい気持ちをどうしたって覚えてしまった。そして「大喜利マスターズトーナメント」は、形式的には思ったよりもD関で、中身は思ったよりもD関じゃなかった。そして何よりコバが「モンチェン」を言ってくれなかったのが一番寂しかったかもしれない。

爆笑問題カーボーイ」11月23日放送回のオープニングトークが、もう今年のすべての中で一番。何回聴いても「そんなのあり!? もう俺うれしくなっちゃったよ」でゲラゲラ笑ってしまう。やたら自分を卑下するウーチャカ、謎の評価をする作家の秋葉、「西城秀樹の目」というフレーズなどなど、聴きどころが盛りだくさんで、やっぱりこういう再現トークをやらせたら太田光は天才的に上手いなと思う。太田光田中裕二という人間の面倒臭さがこれでもか凝縮されていて、この世に存在する人と人の関係性の中で、やっぱり爆笑問題が一番好きだと改めて思った。思い出したようにひさびさに名作マンゴープリンを聴きいたら、つくづく最高。人と人の関係ってそう単純じゃなくて、複雑で歪だよなあ。

でも今月一番笑ったのは、結局「ワイドナショー武田鉄矢かもしれない。

いろいろあってParaviに一時的に加入することになったので、前クールのテレ東ドラマ「うきわ ―友達以上、不倫未満―」を一気に見た。役者、演出、脚本、音楽のどれもが押しつけがましくなく、さりげなくハイクオリティ。門脇麦のすばらしさはもはや多言を要しないけど、森山直太朗が完璧にハマってる。浮き輪、ドーナツ、ろくろ、指輪…といった輪っかのモチーフや、横並びと対面を意識した構図(最終話の、横並びになりながら向かい合うカラオケボックスのシーンの素晴らしさ!!)も気が利いているし、何よりシンプルに映像の感度がめちゃくちゃよくて、特に2話と7話冒頭にやられてしまった。
「エターナルズ」はシンプルにあの暗い画面を3時間近く見続けるのがしんどかったな...。急につらつらと説明が入る感じとか、ファストスが復帰する時の雑な転換とかも冷めてしまった。

Snail Mailやeverforのアルバムをよく聴いた。あと、やっぱり秋はプライマル・スクリームの1stだよなあ〜とか思いながら聴いてる途中で「いや俺が一番好きな『Silent Spring』って思いっきり春って言ってるじゃん」となる、というのを毎年やってる気がする。
Horsegirlの新曲、90'sオルタナマナーに綺麗にのっとっているのだけど、えも言われぬ特別さを感じてしまう。


正体不明の宅録アーティスト・Perfect Young Ladyのカセットは大好物。ヴェイパーウェイブなんて言葉に回収されない、80's歌謡の華麗なる再構築。これがレトロ・フューチャーな音像にこだわり続け、つい最近太田貴子の楽曲を現代に甦らせたayU tokiOが主宰するレーベル・COMPLEXから出ているのは紛れもない必然だ。もう今はCOMPLEXとNEWFOLKしか信用できなくて、そんな2つのインディーレーベルが邂逅するわがつま初ライブに行けないのは本当に忸怩たる思いだ。
阿佐ヶ谷ロマンティクスがひさびさにアルバムを出すらしく、地味にうれしい。1stアルバム「街の色」は10年代中盤の団地系音楽(勝手にそう呼んでるだけだし、「街の色」のジャケットは多分アパート)の中でも特に好き。最近の新曲を聴くと、音楽的なアプローチを広げようというトライ&エラーを感じられた。

カネコアヤノの武道館公演を観に行く。間違いなく今年のベストライブ。数年前までモナレコードのライブスペースとかに立ってたというのがにわかに信じられないくらい、武道館のあの広い舞台がとてつもなく似合っていた。どれだけ広い会場でも、あの歌声の持つ熱量は変わらず隅まで届くし、カネコアヤノは全員と1対1の関係を結んでしまう。中でも「退屈な日々にさようならを」が圧巻で、この曲のあのパフォーマンスだけでも、いつもと違う広い会場でライブをやった意味があると思えるほどだった。「世界のことなんて知りたくなかったのに」と拗ねたフレーズを大舞台で吐いてしまう「序章」や、かたや「気づけば怖いくらい強くなったね」と歌う「閃きは彼方」にもグッときた。 しかし何と言ってもハイライトはアンコールラストの「アーケード」。客電が点いて会場全体が白い光に包まれたその瞬間、1対1から1対全員になったと思う。2階席から見下ろしたアリーナ席にいる無数の人々の全員が、自分の中から自然発生的に湧き出た動きをしていて、その光景が涙が出るほど美しかった。ライブで手を振り上げる人とか、手拍子する人とか好きじゃないけど、この日のこの4分間だけは会場にいた全員のことを心から等しく愛せたぜ。全部正しいから生きていこうな。

だれかが想いを燃やす 恋もキスも たのしい
わたしの花は枯れない 一生枯れさせない
今夜も月がきれい それだけでしあわせ
あなたの花は枯れない 一生枯れさせない

(カネコアヤノ「とがる」)

11月でもっとも好きなあるあるは「見るたび驚く、バラエティでの堤真一の関西弁」でした。