思うことはいつも

生活していて感じたことや触れたもの

2022年2月の記録

2022年のベストバラエティが決定しました。チャンスの時間の「未解決事件検証!TKO木本はタイムリープしてた!?」です。時代の流れとともにバラエティ番組の放送枠がどんどん縮小するなかで、1時間全体の流れでここまで面白いものを見せてもらえることに痛く興奮してしまいました。エピソードトーク単体で十分面白いのに、そこにタイムリープというこじつけが加わることでこんなにも面白くなるなんて。後半の本人登場パートはチャンスの時間が十八番にしてきたイヤモニ指示系企画の到達地点なのではないでしょうか。「タイムリープしたなってきた」という身も蓋もないセリフの面白さよ。今年もバラエティは千鳥の1年になりそうです。

いろんな人が絶賛しているのを見て「マユリカのうなげろりん!!」を少しずつ聴いている。いわゆる深夜ラジオ的なグルーヴ感みたいなものはなく、なんてことないトークが毎回30分続くのだけど、その温度感がとても心地よくてずっと聞いていられる。阪本さんの、中谷さんを突き放すあの拗ねたような口調、とても大好きだ。
マヂカルラブリーANN0の機種変の話が“なさばな”の理想のようなトークで最高でした。

いくつもの漫談を数珠繋ぎにして1時間45分の作品にした、街裏ぴんく独演会「戻れ、みんな待ってる」は圧巻。まったく異なるものたちが確かに同じ世界で共存していて、とても異常なことのように思えるのだけど、でもそれって私たちがいるこの世界そのものではないか。

あたしンち」の共作者(けらえいこの夫)でもある上田信治の「成分表」がとっても面白い。「同じ景色を見ていても、この人の目にはまったく違うふうに映っているのだな」と思える瞬間にたまらなくときめいてしまうのだけど、この本には最初から最後までそんなときめきを感じてしまった。ある事象や概念を最小限まで解体していって見えてくる驚きや、それをまた別の事柄と軽やかに結びつけてしまう感動に満ちている。「受容器」という章の結びの「先日は家にいて、欠伸をこらえるとき顔の皮膚が後ろにひっぱられる感じについて、考えていた。自分はたとえば、世界のそのあたりを受け持つ受容器になれればと思う」という文章がこの本の魅力を端的に表していると思う。中でも「背景」と「所ジョージ」が特に好きでした。

当たり前のように映画を配信で観れるようになって、“映画館で映画を観る”ということの価値が自分の中で相対的に高まっているような気がする。というのを「ウエスト・サイド・ストーリー」を観て改めて実感した。あの映像と音楽の快楽性は自宅のテレビじゃ100分の1も伝わらないと思う。
「ウエスト・サイド・ストーリー」を観るにあたってスピルバーグ作品をいくつか見返したのだけど、「未知との遭遇」とか「激突!」とか、文字に起こしたらたった数行に収まってしまうのに、なんであんなに面白いのでしょう。でも結局は「ジュラシック・パーク」が一番好きかもしれない。子供の頃、千葉県は野田市にあるドライブインシアターで「ジュラシック・パークIII」を観たので、その記憶と密接に結びついている。調べると、野田市ドライブインシアターは昨年14年ぶりに復活したらしいです。びっくり。

「コーダ あいのうた」は脚本がかなり粗いのだけど、“乗り物”にまつわる映画的な運動が120分の物語の中で貫かれているのがとてもよかった。主人公と父親が、トラックの荷台に腰をかけながら心を交わすシーン、とても感動的だ。

「ちょっと思い出しただけ」は正直あまり好きではなかったのだけど、あんなふうに過去の出来事が今でもどこかで生き続けているというのは本当に素敵なことだと思う。だからチャットモンチーというバンドに特別な思い入れはなくても「CAT WALK」は本当に大好きだし、つい先日ストリーミングが解禁された川本真琴では「ドーナッツのリング」を一番愛しています。

ときに自分は「ナイト・オン・ザ・プラネット」と聞くとジム・ジャームッシュより先にHi,how are you? の「NIGHT ON THE PLANET」を思い出す人間なので、映画を見た日の帰り道にずっと聴いていた。

この頃のハイハワの曲はどれも無性にさびしくて大好きだ。当時のプロフィール「借りパクした漫画や延滞した映画、おわっちゃった夏のハーゲンダッツやイーニドがバスから見た景色をうたいます」の素晴らしさよ。

音楽はBig Thiefのアルバムをもうずーっと聴いていて、もはやそれ以外何も聴いていない。もう今年のベストもこちらで決まりです。

ラッキーオールドサン×Laura day romance×UlulUのスリーマンをFEVERに観に行くも、UlulUが出演キャンセルに。正直UlulUが一番観たかったので残念だったのだけど、ひさびさに観たラッキーオールドサンがとてもよかった。テクノロジーに飼い慣らされたせいでCDを聴くのがすっかり億劫で、最新アルバムの「うすらい」を全然聴けていなかったのだけど、こんなにも素晴らしいアルバムなのですね。ラッキーオールドサンはいつだって帰る場所を持たない根無草で、つまりもっとも“Like a Rolling Stoneの精神”を宿した2人組なのだ。アルバムを完全自主販売でリリースし(NEWFOLKの手からも離れ)、47都道府県を巡回しているのがその何よりの証拠だ。2015年頃のインタビューでシャムキャッツの夏目くんが「自分たち以外に国内の音楽でリアルだと感じらられるのはラッキーオールドサンぐらい」というようなことを言っていて、それがとてもうれしかったことを覚えている。だって本当にそうだったし、今もそうだから。

免許を取ったら君をのせて雲の向こうへ
道の駅で降りて
故郷の海がはるかになって夏は過ぎた
ひとりぼっちがふたり
あるいは誰ひとりいないのだ
(鴇色の市)

あらゆるものから解き放たれて、自分が何者でもなくなったかのような感覚になるあの瞬間。そんな一瞬のために自分はポップミュージックを聴いているような気がする。

2月でもっとも好きなあるあるは「冷たい手で目やにを取るときに振り絞る少しの勇気」でした。