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中田敦彦「『曼陀羅東京』プロジェクト中止報告」の“面白さ”

「奇奇怪怪明解事典」でTaiTanが「上半期に観た動画で一番面白い」と薦めていた、中田敦彦の「曼陀羅東京」プロジェクト中止報告が、本当に今まで出会ったことのないような面白さで脳を揺さぶられてしまった。まだ観てない人は、このブログを読む手を止めて今すぐ観ることをオススメします。



25分間、最初から最後まで「ずっと何言ってんの?」の連続である。「実は中田って、聴いてたようで観てたらしいんだよ」「俺のトークの中の中田含有量」「中田が中田を商品にしたときに初めて中田は中田を売ることができる」「結局、中田目当てなんだよな」「次マンガ作るんだったら『中田』だな。楽曲も『中田』」「中田が合法ってのがおかしいんだろうな」など、中田の中田による中田のためのパンチラインのオンパレードだ。“中田”という概念を脱臼させつつ繰り広げられるセルフブースト。それが持ち前のペテン師じみた話術で25分にわたって繰り広げられたすえに「曼陀羅東京、中止です」と締めくくられる。なんなんだこれは。しかし「ずっと何言ってんの?」と思いながらも、腹を抱えて笑いながらまんまと25分間観続けてしまった。まんまと、である。

この動画の面白さの肝は、どこまでが“ボケ”でどこからが“マジ”なのかが絶妙にわからないところにあると思う。後半になるにしたがって「いやいや流石にこれはボケてるだけでしょう」と思うわけだけど(実際あっちゃんも自分で笑いそうになっている)、心の隅で「いや、やっぱり本気で言っているのか...?」と思わせてしまうような絶妙さがある。もちろんあっちゃんはプロの芸人であり“計算づくの戦略家”であるからして、当然“面白いこと”として言っているに決まってるのだけど、一筋縄にまるっきりそうとも思えないような何かがある。例えばまったく同じことをアルコ&ピースの平子っちが言ってれば、完全に“そういうボケ”として全員が受け止めると思うのだけれど、ここで話してるのは“YouTubeでの「講義」とオンラインサロンで富を得て、ときに堀江貴文やDaiGoと並列に語られるお笑い芸人”なのだ。その証拠に、コメント欄やTwitterを見る限り、「奇奇怪怪明解事典」で取り上げられる以前に、この動画が“面白い動画”として受容されてる形跡はほとんどない。YouTubeのコメント欄がそういう場であるというのを差し引いても、動画の内容を茶化したコメントはあまりに少なく、“マジ”なものとして受け取っているのが9割以上だ。

同じく「奇奇怪怪明解事典」で、条件反射的に笑ってしまうような面白い動画を競う「脊髄反射王」という企画が行われていた(暫定チャンピオンは、かの有名な城島リーダーによる「あややとぅーやー」)。そこで何度か言われていた「ツッコミが入らない場で行われてるからこそ面白い」という概念。それがこの「曼陀羅東京」中止報告動画では、動画内のみならず、コメント欄をはじめとする、この動画を取り巻く環境すべてにまで拡張されているのではないか。当事者レベルのツッコミはもとより、メタレベルのツッコミすら不在な状態。例えば初期「相席食堂」のロケVTRを、千鳥のワイプなしで“普通のロケ番組”として流していたら、これに近い面白さになるのかもしれない。

なので、その面白さが広まるにつれて、もしかしたらこの動画の魔法は解けてしまうかもしれない。こうしてブログを書くことで、その一端を担ってしまったらごめんなさい。でも、あんなに間を溜めた「まったく違法じゃないし...体に、悪く、ない」なんて面白すぎるものを目の当たりにして、口をつぐんでいられるわけがないだろう。

しかしTaiTanはどうやってこの動画に辿り着いたのだろうか。素晴らしいものに出会わせてくれてありがとうございます。そして「脳盗」レギュラー化おめでとうございます。